職業発見プログラム : 豊島学院高等学校(2026年7月24日)

7月24日(金)、国立国語研究所に、東京都豊島区にある豊島学院高等学校の1、2年生と引率の先生(合計11名)が来所されました。案内が始まる前から、研究所エントランスにある所員の著書コーナーの本を手に取り、興味津々です。
現在の中等教育のカリキュラムには探究学習があります。今回の訪問は、同校で3年次に行われる、一人ひとりが問いを見つけて探究を深める「個人探究」に向けたものでした。

最初に案内した「研究図書室」は、全国で唯一の日本語に関する専門図書館です。図書室のリーフレットをもとに、所蔵資料の説明が行われます。

研究図書室の中で説明を聞く豊島学院の生徒と引率の先生の写真

図書室には、和書・洋書あわせて図書約16万冊、雑誌約6000種の蔵書があります。明治時代に使われていた教科書や、海外の言語で書かれた教科書などもあります。貴重書庫では、温度を約20℃、湿度を約45%に保ち、本が傷まないようにしています。

閉架書庫には、限られたスペースでも書籍を置けるように、動く書棚が設置されています。生徒の皆さんは、電動式で動く書棚に驚いて、恐る恐る開閉ボタンを押しました。方言に関する書棚では、「今開けた棚は、どこの地域だろう?」と確認をしてから、各地域の方言資料を見つめていました。

机に広げてある『日本言語地図』を見ながら説明を聞く生徒の皆さんの写真

図書室では、『日本言語地図』の紹介もありました。全国地図に語形を表すスタンプを押し、言語の地理的な違いが一目でわかるものです。国語研では、1950~1960年代に、60歳以上を対象とした聞き取り調査を全国2400か所で行っています。
「とうもろこし」や「かえる」を表す言葉の分布図を紹介すると、どこの地域でどんな言葉が使われていたのか、指をさしながら確認する様子が見えました。

研究図書室の見学後は、福永由佳教授から「ことばを研究するって、どんな仕事?」と題して、研究者の仕事についての講義です。この内容は、見学申込の際の「先生ご自身が現在の研究テーマに関心を持たれたきっかけや、どのような経緯でその研究内容を探究しようと考えられたのか」というご希望に応えたものです。

福永由佳教授の講義風景。スクリーンには「研究者は研究だけしている?」の文字が見える

福永教授は、まずAIに生成させた、研究者の一般的イメージを提示し、実際の研究生活との違いを説明。自身の経験を交えながら、受験を考える高校生に「失敗や挫折の経験があっても、その後どう前に進み、自分の将来につなげていくのかが大事」とエールを送ります。
フィールドワークを通して定住外国人(日本で暮らす外国人)の日常生活を「理解する」ための基礎研究と、日本語教材や教授法を開発する実践的研究は、「役に立つ」を支える両輪だと、福永教授は語ります。

福永教授の声掛けに手を上げる生徒の皆さんの写真。

ここで、福永教授から、定住外国人に関する三択問題を出題。第1問は「日本には外国人が何人住んでいるでしょう?」。先生・生徒の皆さんは、普段過ごしている街の様子を思い出しながら、答えを考えて挙手します。
福永教授の研究対象は、定住外国人のなかでも母数の多い「留学生以外の外国人」の言語生活です。宅配便の不在通知票を例にして、日本語の読み書きができない方でも、周囲とコミュニケーションを取って問題解決をする事例を説明します。

生徒にコメントを訪ねていく福永教授の画像

講義が終わると、福永教授は一人ひとりに講義へのコメントをたずねます。生徒の皆さんからは「イメージしていた研究者とは違い、アクティブでびっくりした」、「これまで「外国人にとってどのような日本語が難しいのか」を考えたことがなかった」、「外国での調査もありますか?」など、幅広くコメントがありました。講義中に前のめりになっていった皆さんが、熱心に耳を傾けていたことがわかります。

豊島学院高等学校の皆さんの学びが深まり、実りあるものになりますよう心から願っています。