
第16回NINJALフォーラム「ここまで進んだ! ここまで分かった! 多様な言語資源に基づく日本語研究」
国立大学や国立の研究所では、法人化後6年ごとに中期計画を立て、運営しています。国語研も、2021年度で第3期6年の最後の年を迎えました。
今回のNINJALフォーラムでは「ここまで進んだ! ここまで分かった! 多様な言語資源に基づく日本語研究」をテーマに、国語研第3期の6つのプロジェクトとコーパス開発センターを加えた7つのプロジェクトの6年間の成果を報告し、2022年4月からの第4期につなげることを企図しました。
講演1「対照言語学の観点から見た日本語のプロソディーと動詞意味構造」
窪薗晴夫(理論・対照研究領域 教授)、松本曜(理論・対照研究領域 教授)
前半では窪薗教授が日本語のアクセントを対照言語学的観点から分析しました。また後半では、松本教授が動詞の意味構造について考察しました。

講演2「統語・意味解析コーパス(NPCMJ)から見えてきたこと~日本語テキストにおける主語省略文と受身文の使用~」
プラシャント・パルデシ(理論・対照研究領域 教授)、長崎郁(名古屋大学 特任講師)
パルデシ教授が『統語・意味解析コーパス(NPCMJ)』の構築過程と、それを使った研究として、主語省略文、受身文に関する研究を紹介しました。主語省略文は書きことばより話しことばで出現する頻度が高いこと、翻訳テキストでは主語の省略が起こりにくいこと、受身文は話しことばより書きことばに多いことなどの実証的な結果を示しました。

~日本語テキストにおける主語省略文と受身文の使用~」より
講演3「消滅危機言語・方言を記録し、継承する」
木部暢子(言語変異研究領域 特任教授)、山田真寛(言語変異研究領域 准教授)
木部特任教授が『日本語諸方言コーパス(COJADS)』の作成や、そのなかでわかったことを紹介しました。また、山田准教授が、沖永良部島でおこなった調査や、言語の継承保存を説明しました。

講演4「『日本語歴史コーパス』ができて分かったこと」
小木曽智信(言語変化研究領域 教授)
小木曽教授が、上代(奈良時代以前)から明治・大正時代までの日本語の歴史を研究することができる通時コーパスの構築と、今後の研究の発展について紹介しました。

講演5「コーパスを通して日常のことばの特徴を探る」
小磯花絵(音声言語研究領域 教授)
小磯教授が、『日本語日常会話コーパス』の構築と、その活用によって明らかになった事例を紹介しました。

講演6「日本語学習者による多義語の意味推測ストラテジー」
石黒圭(日本語教育研究領域 教授)
石黒教授が、日本語学習者の語彙の意味理解能力において、多義語の意味推測をどうおこなっているのかについて調査結果を紹介しました。

講演7「リアルタイムMRI動画を用いた調音音声学の再構築─ワ行子音の問題─」
前川喜久雄(音声言語研究領域 教授)
前川教授がリアルタイムMRI動画撮像技術を紹介し、そのデータの解析結果のひとつとして日本語のワ行子音の調音を取り上げ、従来の音声学研究を新たにする必要性を説きました。
![「ワ行子音に関する結論」典型的な[w]には明瞭な二重調音が観察された。一方、日本語話者には明瞭な二重調音を行うものはみあたらなかった。両唇には無声両唇摩擦音[ɸ](「フ」の子音)と同様の狭めが生じている。軟口蓋の狭めは[ɯ](「ウ」)よりも大きいので、子音の狭めとはみなせない。](https://kotoba.ninjal.ac.jp/wp-content/uploads/2022/03/news_r_ninjalforum2022_g_2.png)
ポスター発表
当日は7つの講演のほかに、下記のポスター発表がおこなわれました。

- 井戸美里(理論・対照研究領域 プロジェクト非常勤研究員)
「対照言語学の観点から見た現代日本語のとりたて表現と否定的評価」 - 木部暢子(言語変異研究領域 特任教授)
「日本の消滅危機言語・方言の保存と継承」 - 大西拓一郎(言語変化研究領域 教授)
「言語地図データベースについて」 - 山崎誠(言語変化研究領域 教授)
「「語誌情報ポータル」にみる語の消長」 - 柏野和佳子(音声言語研究領域 准教授)
「日常会話に現れる応答表現」 - 宇佐美まゆみ(日本語教育研究領域 教授)
「「BTSJ 日本語自然会話コーパス」と「自然会話を素材とする教材NCRB」の連携の意義」 - 浅原正幸(コーパス開発センター 教授)
「『分類語彙表』に基づく言語資源整備」 - 鑓水兼貴(研究情報発信センター プロジェクト非常勤研究員)、高田智和(言語変化研究領域 教授)
「鶴岡調査における共通語化最終段階の方言使用」 - 山田真寛(言語変異研究領域 准教授)
「消滅危機言語保存のための市民科学者の育成 : 沖永良部島における実践」 - 新野直哉(言語変化研究領域 准教授)
「新聞記事に見る大正末期の言語規範意識─「言語記事データベース」の活用例として─」 - 山口昌也(音声言語研究領域 准教授)
「国会会議録を用いた言語表現の経年変化分析」 - 石本祐一(コーパス開発センター プロジェクト非常勤研究員)、中村壮範(コーパス開発センター 特任専門職員)
「コーパス検索システム『中納言』と『まとめて検索 KOTONOHA』」 - 大村舞(コーパス開発センター プロジェクト非常勤研究員)、若狭絢(コーパス開発センター プロジェクト非常勤研究員)
「短単位・長単位に基づいた日本語 Universal Dependencies」 - 近藤明日子(言語変化研究領域 特任助教)、高田智和(言語変化研究領域 教授)
「延喜式祝詞の品詞構成」 - 朝日祥之(言語変異研究領域 准教授)
「1950年代のハワイにおける言語生活 : ハワイ日本語ラジオ放送から」


今後の国語研の活動
2022年4月からは、「開かれた言語資源による日本語の実証的・応用的研究」をテーマにした第4期が始まります。今後の国語研の研究活動にご期待ください。

※注 記事中の職位は、開催当時のものです。