絵本で伝承する、島の言葉
国語研の研究者が参画するプロジェクト「言語復興の港」から、2冊のかわいらしい絵本が刊行されました。

お子さんの小さな手にもなじみやすいこちらの絵本、開いてみると、日本語、英語のテキストに、奄美群島沖永良部島上平川集落のことば、「ひょーむに」のルビが添えられています。「ひょーむに」は、この絵本の作者、松村雪枝さんの母語ですが、「ひょーむに」をはじめとする、沖永良部島のことば(「しまむに」)は、UNESCOの「危機言語地図(Atlas of the World’s Languages in danger)」に掲載され、今何もしなければ近い将来なくなってしまう「危機言語」だといわれています。
言語監修・解説をつとめた横山晶子特任助教はこう解説します。
「言語を次世代に継承する手段の1つに「その言語を使う場面を増やすこと」「その言語で楽しめる、メディアや作品を増やすこと」が挙げられます。特に沖永良部島では、「しまむに」を話す人は高齢層が中心ですが、今でも壮年層には「自分では話さないけれど、聞いたらわかる」潜在話者がいます。そしてこの潜在話者世代は、社会や家庭で子供たちを教育する世代でもあります。」
絵本をきっかけとして次世代に「しまむに」を伝承する、素敵な取り組みが進行しています。
アートの力で「しまむに」に興味を
「言語復興の港」では、これまでに、沖永良部島以外のものも含めると、7冊の絵本や教科書を出版してきました。今回の2冊は、沖永良部島の作家、松村雪枝さんの物語を元に、奈良芸術短期大学デザインコース専攻科の小島光貴さん、田中茉央さんがイラスト・デザインをつとめています。


『はちうえのハイビスカス』は “死期における生き方” を、『洋服のおしゃべり』は ”自分の意思を持ち、表現する力” を描いた作品です。どちらの作品も力強いメッセージが込められており、『はちうえのハイビスカス』には優しくやわらかなイラストが、『洋服のおしゃべり』にはパワフルでたくましいイラストが描かれています。
「しまむに物語を、アートの力を使って届けることが、しまむにに興味を持つきっかけを増やし、「しまむに文学」「しまむに文化」の拡大に繋がることを願っています。」(横山晶子特任助教)
こちらの絵本には「しまむに」の解説が付いています。また「ひょーむに」の朗読音声をWebで聞くことも可能です。「しまむに」話者の方だけでなく、「しまむに」に触れてみたいという方も、ぜひ手に取っていただきたい2冊の絵本です。
言語復興の港
「子どもたちが大人になったときにも、島のことばが聞こえる世界を残すために」をメッセージに、言語の多様性が認められる社会を目指して、「何もしなければ」近い将来なくなってしまう地域言語の復興研究を行っている。主に琉球諸語が話されている地域を中心に、国語研の山田真寛准教授、中川奈津子准教授、横山晶子特任助教を始めとする地域言語の研究者・作家(絵描きや写真家など)・デザイナー・地域の人たちが協働して、地域言語学習コンテンツの制作・利用プロジェクトを展開している。沖永良部島では『みちゃぬ ふい』『シマノトペ』『塩一升の運』『0から学べる島むに読本』を制作(ひつじ書房による出版を含む)。
(https://plrminato.wixsite.com/webminato)
『はちうえのハイビスカス』『洋服のおしゃべり』
| 著者・ISBN | 『はちうえのハイビスカス』 文 : 松村雪枝、絵 : 小島光貴、言語解説 : 横山晶子、英語翻訳 : Hara Alina(ISBN : 978-4-9911126-3-8) 『洋服のおしゃべり』 文 : 松村雪枝、絵 : 田中茉央、言語解説 : 横山晶子、英語翻訳 : Hara Alina(ISBN : 978-4-9911126-4-5) |
| 制作、発行 | 言語復興の港、奈良芸術短期大学 |
| 出版年月日 | 2023年10月7日 |
| 購入方法 | 通信販売でお求めいただけます。 「言語復興の港」みなと商店(https://plr.thebase.in/) |
| 価格 | 1,000円(本体価格) |